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No.9 ワインエキスパート(2007年合格)―木村 真樹

876No.9 ワインエキスパート(2007年合格)―木村 真樹

 

もうかなり昔ですが、学生時代の友人三人で広島に旅行に行ったときのことです。ひと観光を終え、すっかり腹ペコの我々三人に「懐石料理○○円」の看板が眼に飛び込んできました。正直なところ、私は地元の駅弁のほうが良かったので、懐石料理にはまったく興味は無かったのですが、他の二人が「懐石」のもの珍しさと「○○円」に強くひかれていたため、結局ついていくことになりました。店に入りしばらくすると料理が出てきました。それは見た目にとても美しい料理ばかりでした。友人二人は美味しそうに料理を食べ始めました。友人の一人は、「こんな美味いものはじめてだ!」とまで言いはじめました。ところが、私にはまったく美味しいと感じられませんでした。料理の一品一品は美しく形作られてはいるものの、素材自体がいまひとつで、作り置きされてそのままに放置されていたのではと思えるほどにパサパサな品さえ多くありました。私は友人二人に、「この料理のどこが美味しいの?」と聞くと、二人に逆にあきれたような顔をされてしまいました。
私はこのとき、ある料理長から聞いた話を思い出しました。それは、「『味』というのは主観的なんです。多くのひとは、普段食しているものを『美味しい』と感じるため、食材の比較を客観的にはできないのです。特に偏食の方はそうですね。」というものでした。確かに大根の甘辛なんて皆感覚が違ったりします。しかし本来の大根の味覚がわかっていなければ、今食べている大根が辛いか甘いか、旨いか不味いかなんて語れないと思いました。

それから何年も経って、仕事などで山梨に時々行くようになりました。宿泊先のホテルで、職場の人たちと夕食をしながら、三種類のグラスワインをいただきました。三種類のワインを何気なく飲んでいたのですが、なんとなくその内の一種類だけが浮いているような気がしました。「このワインだけ他のに比べるといまひとつ・・・。」、そう言うと職場の人に、「それはお前の好みの問題だろう。」と怒られてしまいました。それは確かにその通りなのですが、あまりに気になった私はホテルの方に三つのワインの事を聞いて見ました。するとやはりその一種類だけまったく異なる産地のワインでした。まだワインのことなど何も知らない時でしたが、「ワインこそが、味覚を客観的に表現することが確立された食品なのではないか」、と思いとても興味を抱くようになりました。ワインの色の濃い淡いや、酸味の度合い云々はきっとそうだと思いました。
こうしてワインの勉強をはじめる事になったのですが、膨大な知識を詰め込むのは容易ではありませんでした。もともと私は自宅では集中ができないタイプなので、趣味の旅行の最中にもテキストを持参し、電車や飛行機の中で本を読んだり、ホテルで勉強したりしていました。もちろん、二次試験対策と理由付けて夜はワインを飲みます。旅先のレストランでハウスワインをいただいては、「ワインの勉強中なのですが、このワインの品種を教えていただけますか?」といつもやっていました。ワイン工場見学に行っても同じようなことをしておりました。すると、結構皆さんとても親切で、こと細かにいろんなことを教えてくださったり、他のワインもサービスしてくださったりしました。ワインの勉強を通じて、いろいろな体験が出来たことはとても有意義でした。

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