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No.16 ワインエキスパート(2008年合格)―玉村 邦夫
ワインは楽しいお酒
2008年1月、僕は還暦を迎えた。50歳を過ぎてから「誕生日」は歓迎すべき行事ではなくなっていたが、「還暦」は何故かとても嬉しかった。「生まれ変わる」とか「第2の人生」といった言葉が頭をよぎり、何か新しいことにチャレンジしてみようと思った。いろいろ考え抜いた末、「ワインの勉強」をしようと思い立った。 ワインの勉強は記憶力の勝負と聞いたことがある。4,5年ほど前から、急速に記憶力が減退しており、「なんとかリカバリーしたい」という思いが募っていたことや、前年、家内とイタリア旅行をした際、折角ならイタリア料理とイタリアワインを堪能してみたいと、ちょっぴりワインの勉強をしたことがきっかけとなった。 早速調べてみると「ソムリエ資格認定試験」というものがある。以前勤務していた愛宕の会社のそばにワイン教室があったのを思い出し、インターネットでアクセスしてみると今月開講だという。なにか運命的なものを感じ、早速「ワイン認定試験準備講座」に申し込んだ。
それからの6ヶ月、「認定試験準備講座」に申し込んだことをいくたび後悔したことか。「楽しくワインを飲む講座」に申し込めば良かったと、何度思ったことだろう。 AOCやシャトーの名前など、いくら勉強しても頭に残らない。毎週行われる復習テストは「もう少し頑張りましょう」とか「もう一歩です」ばかり。100点をとる人が居るというのに、僕は40点から60点の間をうろうろ。加えて、周りは若い人が殆どだ。僕だって昔はもう少し記憶力は良かったのにと思わず愚痴がでる。「2年あればなんとか受かるかもしれない」と弱音を吐くと、親友から「逃げてはだめだ」と怒られる始末。
少しずつ勉強の仕方に工夫を凝らし始めた。僕は昔から地理や地図が好きだったので、徹底的に白地図にAOCの位置を書き込んでみた。頭の中に地図が浮かぶまで繰り返し眺めた。毎週、復習のレジメをつくり、ワインの好きな友人にメールした。飲み会は必ずワインの飲める店に行った。友人の質問に受け答えしながら次第に知識が広がっていった。 7月末のスクールの終了試験は相変わらず50点も取れなかったが、その頃から、覚えてきた知識が徐々に相互につながり始めた。試験まであと1ヶ月。もうちょっと努力すればなんとかなるかもしれない。記憶力が若い頃の3分の1なら3倍勉強すればよい。もし落ちても、また来年頑張ろう。
1次試験は難しかった。まったく分からない問題も何問かあった。発表までの2週間がとても長かった。なんとか受かったが、たぶん、合格ラインぎりぎりだったろう。 でも、受かった瞬間から僕の意識が大きく変わった。それまでは、「落ちても来年があるさ」と思っていたのだが、「これで落ちたら、今までの努力はなんだったのだろう」と思い始めた。「絶対に受かりたい」という気持ちが心の底から湧いてきた。2次試験まで残り2週間しかなかったが、猛烈に勉強した。ただ、悔しいことに長く続けて勉強できないのだ。1時間も勉強を続けると頭が痛くなってくる。1時間休んでまた1時間。ああ、情けない。年だなあ。
この8ヶ月間、殆ど毎日ワインを飲んだ。それまでの30年有余、同年代の人たちと同様、ひたすらビール、日本酒、焼酎の毎日だったのに。スクールのテイスティングで約100種類。家や外で約100種類。たぶん200種類を超えるワインを飲んだ。自宅では家内にブラインドテストに付き合ってもらった。テイスティングの技量はまだまだだが、飲めば飲むほどワインの楽しさが分かってきた。 「ワインは楽しいお酒」である。日本酒は「ひとりしみじみ飲む」のが似合うが、ワインには陽気さが似合う。大体、大勢で飲むと沢山の種類が飲める。ひとつひとつのワインの味が違うから、わいわいがやがや批評しながら飲むとますます楽しい。ワインはそれ自体が話題になる。
10月6日、協会のHPで2次試験の合格発表があった。自分の受験番号を見つけたときは、本当に嬉しかった。8ヶ月の努力や、苦しんだ時のことが思い出される。充実感と達成感がこみ上げてくる。すばらしい先生に恵まれたことや、スクールの友人たちと励ましあったことが大きな力となった。 ラッキーもあった。「エイヤッ」で答えた問題が4問中、3問当たった。最大の幸運は、テイスティングの試験に「泡盛」が出たことだ。30年の寄り道が、思わぬご褒美となって、かえってきた。
でも、本当の勉強はこれから始まるのだろう。 僕はエキスパートだからソムリエやアドバイザーの方と違い、「ワインの知識」を仕事で使うことはないが、これからは何らかの形で身の回りに還元していこうと思う。 ワインの勉強を始めて、ワインに関心のある人が思いのほか沢山、自分のそばにいることに気づいた。「ワインの楽しさ」をもっと多くの人に教えて上げよう。友人達は、地元でボランティアのワイン教室を開けという。そのためにはまだまだ勉強しなければならない。 10月下旬、僕はテイスティングの能力を高めるべく、さらなる上のコースに通い始めた。
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