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No.18 ワインエキスパート(2008年合格)―石田 直子

No.18 ワインエキスパート(2008年合格)―石田 直子


夢が私を動かした

ワインエキスパートの合格通知が届いた時、うれしさと共にあの猛烈に夢中になって勉強した時間もおしまいなのか・・・、とさびしくもありました。受験を決心したのは3月、本格的に勉強し始めたのは4月。この1ヶ月間迷いもあり、なかなか勉強に取りかかることができませんでした。


そんな折、主人が、「きっと君のためになるから・・・」と、急きょ、ドイツ・フランス家族旅行を計画してくれました。

レンタカーでドイツ・モーゼルの銘醸地を巡り、間近で見た急斜面のぶどう畑は、ただただ驚くばかりで、ワインテキストの畑名と照らし合わせては感激で大はしゃぎしていました。トリアーを過ぎ、フランス・アルザスに入ると、キッシュロレーヌとリースリングの絶妙な美味しさにうなずくばかり。ドイツ・リースリングとの味わいの違いを、本場で体感できました。

 

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ブルゴーニュに至っては、通り過ぎるだけでしたが、国道74号線を南下しつつ、知っているアペラシオンに出会うと車を止めて、看板の前で写真を撮ったり、土地の大気に全身をゆだねたものでした。ベルナール・ロワゾーのシャトーレストランに一泊した時のこと。堂々とした体躯のソムリエが、片言の英語で飲みたいワインを伝えようとする私たちに、終始うなずき微笑みながら丁寧に、「この料理には君たちの言うジュブレ・シャンベルタンは合わないよ。シャンボール・ミュジニは料理の素材を立体的にすると思うよ」というようなことを言いました。ワインの伝統と文化が根づくその土地の大らかさ、優しさを感じ、素晴らしい時間を過ごすことができました。このとき、もっと知識があれば・・・、ワインの背景を勉強していれば・・・、旅の密度も違ってきたのではないかと、小さな後悔が生まれたのです。この後悔は、帰国後、「ワインを体系立てて深く知りたい」「ワインの素晴らしさを人に伝えたい」という強い強い決心に変わったのです。


4月から本格的に勉強するとなると、膨大な量を5ヶ月間で暗記しなければなりません。この期間を短いか長いかを考えるよりも、まずは毎日勉強すること、細切れの時間を有効に使うこと、体調と環境を整えることを基本に実行しました。
学生の頃と違い、「脳力」は鈍くなり、再び活性化させるにはどうすればよいか・・・。私は1日のはじめに、その日ちょっと無理して頑張れば達成できる目標を立てることにしたのです。例えば、「ドイツ銘醸畑ラインガウ、イタリアD.O.C.G.名と品種」といった内容をノートに書き込み、暗記と確認が終わると赤丸を付けていくのです。

目標値は、毎日、何日かおきに繰り返したり、別の目標値と入れ換えたりと、頭脳を楽しませるよう工夫しました。日ごと、赤丸が増えていくのが励みになり、今度はもっと増やしてチャレンジしようと欲も出てきたくらいです。
勉強が続けられたのも、メンタルな方向からアプローチしたことが大きいでしょう。折しも、今年夏は、北京オリンピックが開催されました。厳しい環境の中で努力するオリンピック選手の言葉をメモし、1日ひと言を自分のテーマにして勇気づけたのです。
「強い心を持って」「練習した分だけ結果は出る」「今までやってきたことを信じて」「結果を出すのは、自分」「好きな気持ちが自分を動かす」「苦しみを楽しむ」等々、珠玉の言葉の宝庫です。暗記の山の前で、くじけそうになる私は、どれほどの気力を受け取ったことか・・・。
「脳」も詰め込んだ後は、アウトプットしなければリラックスしないようで、次の暗記に取りかかれません。必ず、得た知識はすぐ使うようにしました。


ワインショップにこまめに通い、店員の方に質問したり、情報交換したりしました(平日午前中がゆっくり話せます)。2次試験対策にも役立ち、プロの方の味わいの見方、感じ方を細かく質問しました(しつこいくらいに・・・)。「メルロとカベルネの違いはどこでわかるのですか?」「酸の質って何ですか?」など、基本的な内容を多くの人にし、メモを取っては家でチャートにしてまとめ上げる作業をしたおかげで、最大公約数的テイスティング方法が身についたと思います。電話で問う時もあり、どのような状況でも、店員の方々は、言葉丁寧に、朗らか大らかな対応、凛としていました。

ワインがそうさせるのか、そのような人々がワインを好むのか、定かではありませんが、私は憧れの人をたくさん見つけることができたのです。この気持が、時につらくなる勉強を楽しみの方向へ向かわせました。

 

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家族や仕事との関わりを保ちながら勉強を続けるのですから、周囲の理解と協力を求める手続きを忘れてはなりません。8月ともなると、週末は家で何時間も机に向かいます。子供たちは夏休みですし、なかなか家族と遠出というわけにはいきません。幸いにも、家族の理解は得ていたので、主人は子供たちを連れてよく遊びに出掛けていました。本当に感謝です。受験勉強という私の個人的都合ですが、必ず周囲を巻き込みます。私だけでなく、関わる人も変化することを心に留めて、謙虚に過ごすことは大事です。
この半年間、ワインエキスパートの試験に合格するという大目標を掲げながらも、精神心的にも人間関係においても、ダイナミックに悩みながら変化した期間でした。

 

これからの人にひと言。目ざすことに意味があります。そして、たくさんの発見があなたという磁石に吸い寄せられてきます。

11月8日土曜日、山梨ワインツーリズムに家族で出かけました。午前中雨降るなか、寒がっている子供たちに、私の趣味につき合わせてしまい申し訳ないな、と思っていたところ。「ママが、ワイン頑張ったから、みんなで山梨に来られたんだね。ママと一緒でうれしい。楽しい」と言って、テイスティングの真似ごとのように、ぶどうジュースの入ったグラスをスワリングし、満面の笑みで飲んでいました。酔いもあったのか、私の頬は温かくなりました。さらなる目標を頭に浮かべながら、家族とワイナリー巡りを楽しんだ1日でした。

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