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No.38 ワインエキスパート(2009年合格)―酒井 健雄

No.38 ワインエキスパート(2009年合格)―酒井 健雄

 

やはりワインは素晴らしい

 

 ただ長いだけの20年余のワイン歴でいわゆるノムリエであった私が独学でエキスパートの試験を受けようと思いたったのは5月の連休のころでした。ふだん私はきのこの研究をしていますがワイン業界とは直接接点はなく、飲むほうもここ数年しばらくワインを離れていました。しかしきのこの味わいや香りはワインと共通するものがあるな、と感じています。その中で偶然、感性の豊かな素晴らしいアドヴァイザーの方と出会い、その方がお仕事でワインと真摯に向き合っておられる姿を見て、ワインをもう一度勉強してみたいなと思ったこと、さらにワインバーをしている友人が、きっと合格するよ、とすすめてくれたのがきっかけです。かつてよりいつかはエキスパートになりたいなと思っていましたので決心し、さっそく本屋さんに行き、T先生の30日間完成マスターという対策本を購入し勉強を始めました。最初のページで早くもこれは大変だな、30日どころではないな、と考え作戦を立てました。まず、各論ではもっとも難関で量が多いフランス、イタリア、ドイツをいわば主教科とし、総論、他の国各論は副教科、と分け、まず主教科では、なじみにくいドイツから入りました。総論を少しずつやりながらドイツを3週間、イタリアを3週間、フランスを6週間、最後に8月は復習にあてようというものです。

 

 しかし、やりだすと仕上げたつもりの箇所が翌週にはもう忘却のかなた、ということが多く、山登りは遭難しかけでした。そうこうしているうちに7月にあの分厚い教材が届きました。そこで、まとめの本の記載のところと、この教材を照らし合わせてみると、なかなかなじんできて、はかどってきました。7月末には一通り網羅しましたが、あと3週間。この時点で過去問をやってみると4割程度で頭に記憶がきちんと入ってないことが判明し、何を覚えて何を覚えないかを明確に整理し、今度は覚え方を考えながら復習しました。これが大変重要であったと思います。同時に中華のシェフでソムリエをめざしている方(今回一緒に合格しましたが)とお互い時間をとって、口頭試問をしあって弱点補強をしました。夜中にも電話で口頭試問、ということもありました。問題を出す、ということは自身でもよく把握していないとできないことですので、非常に有用です。

 

 自身でコツコツやる期間、それからこのように友達と勉強会の時間のバランスがよかったのか、過去問がようやく8割近くとれるようになり、寸前ではもっと力がついていました。やっと山頂が見えてきました。

 

 試験1週間前の日課です。まず朝、ジョギングしながらボルドーのシャトーをすべて思い出し、次に行きの電車でイタリアのDOCGや有名DOC、帰りはVDNとVDL、寝る前にもう一度ボルドー、などとルーチンで記憶を維持します。トイレにはイタリアの地図を貼り、地理と料理の名前を覚え、ドイツのベライヒは職場に貼り出していつでも思いだせるようにし、仕事中でも気になったときはいつも本を座右において確かめる作業をしました。なお、あの分厚い本は単元ごとにばらすと持ち運びに便利ですよ。

 

 いよいよ一次試験、多少うっかりミスはありましたが、自己採点ほぼ9割近くとれ、次は2次試験にむけてのテイスティングの準備です。ハードリカーはもともと大好きなのですが、系統立って知らないので少々困りました。自身で購入したり、友人のバーでブラインドで試飲させてもらい度数と味わいを頭と舌に焼き付けました。ワインは、奇をてらうことなくポピュラーな品種をきちんと、たとえばソーヴィニオンブランならフランスとニュジーランド、という具合にその特徴をきちんと舌でとらえる練習をしました。いわゆる当てものではない、ということを意識する必要があると思います。こう感じるのでこうだ、という根拠が必要で、あいまいな勘では失敗します。そのためには品種の特徴をきちんと理解し頭にも舌にも記憶しておく必要があると思います。

 

 さて、2次試験がやってきました。ルーチンの記憶の作業をずっと続けていたので、口頭試問はほぼクリア、テイスティングは3種のみとなりましたが、アルマニャックはブドウの香りがあるのでラムと自信をもって選択、SBは楽勝、赤は嫌いなサンジョベーゼは間違えましたがイタリアは正解で助かりました。

 

 以上、私の経過ですが、次はシニア資格をめざして常に勉強を続けていきたいと思います。エキスパートの勉強をしてよかったことは、世界中のワインを勉強できたこと、ワインをより深く理解し愛せるようになったこと、有名な銘柄や高価なワインだけを追いかけて飲んでいた自身が実は何もわかっていないことに気付いたこと、インポーターやサーヴィスの方がいかに苦労努力してワインを提供しておられるかということが理解できた点です。先日は、あこがれの佐藤陽一さんのお店に伺ったところあたたかく迎えていただき、エキスパートの勉強をしなかったら決して感じることができなかったであろう思いを実感し嬉しくなりました。いろんなサーヴィスにはそれを表現するまでの並みならぬプロセスがあると心から理解できたからです。なにげない一杯にどれだけの思いが詰まっているのか。でもそれはあくまでもなにげない一杯なんですね

 

 ワインを知り、感じるのに王道なし、感性を磨き続けていくことが自身を磨くことだと信じています。おそるべし、ワイン。やはりワインは素晴らしい!そしてワインを通した出会いに感謝します。

 

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左:皆に合格祝を。トルコ松茸たっぷりの河豚鍋。これとシャンパンは最高です。
右:持っているのはグラスの代わりに、ハマクサギタマゴタケ。 独特の香り。

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